Takuya Nakamura インタビュー

Takuya Nakamura インタビュー

 INTERVIEW                           2012.6.26 Takuya Nakamura ミュージシャン、プロデューサー

 

先日、INGEL NYでEmi Nipsがダニエル・シュレットというサウンドエンジニアにインタビューした。彼がNerve(ナーブ)というバンドのライブのエンジニアとして来日するという情報を得たわたしは「ならば、ちょっと挨拶がてら」と青山の「月見ル君想フ」まで行くことにした。が、これがもう衝撃的なライブだった。

ドラマーのジョジョ・メイヤー率いるこのNerveが、他のブレイクビーツ/ド ラムンベースのアーティストと大きく異なるのは、すべてが生演奏であるということ。つまり、ドラマーは人力でビートを刻み続け、キーボードもベースもリア ルタイムでサウンドを作っていく。この実験的なアイデアをもとに奇跡のような演奏が繰り広げらていくなかで、キーボード、トランペットをプレイする日本人 男性タクヤ・ナカムラのサウンドエフェクトが不思議な光を放っていることに気づいた。ショーの半ば、彼がトランペットを鳴らし始めるとステージ背景に美し い「満月」が浮かび上がった。三人のインプロビゼーションが展開する一瞬の隙間に息をのんだ直後、また神聖なグルーヴが押し寄せてきた。何となく、地球外 生命体同士の高等な会話ってこんな感じじゃないか、と思ったが、そんなことを話せる友人をこの場に連れて来なかったことを後悔するしかなかった。

仕事を終えたダニエル氏につたない英語で感想を伝え「タクヤさんがどんな人なのか知りたい!」と言うと、

「OK, COME IN!」と言って紹介してくれた。

「NERVE」

INGEL 昨日のNerveのライブ、素晴らしかったです。まるでSFの小説を読んでるみたいでした。

Takuya 最近僕がちょっとヴァンゲリスみたいな感じを目指してるからかな。「ブレードランナー」的なね。

INGEL ブレイクビーツのような音楽が生演奏で繰り広げられていることに驚きました。効果音的なサンプルもスペイシーで面白かった。

Takuya うん。Nerveで は基本的にはライブもレコーディングもシンセやサンプラーを普通に手で弾いてるね。フレーズサンプルなんかは分解しておいてバンドに合わせてテンポが変 わっても対応できるようにしてます。最近はAbleton Live(コンピューター)でタップテンポを使って常にバンドとシンクさせているので、長いサンプルやアルペジオはバンドと同期したりもしています。

INGEL Nerveは「ダンスミュージック」ですか?

Takuya Yesman!ただNerveってミュージシャンのファンが多いので、みんなこうやってジーッとステージを見るから、ときどき「ダンス」という感じにならない。Nerveが最初にスタートした頃はもっとダンス/DJ Culture 的なお客さんが多かったんだけど…。そういう意味では、先日のDJ SHADOWのツアーサポートの時はダンスファンが多かったし、みんな踊り始めるからいいよね。そういうところに僕たちは出て行かなければと思う。そのために始めたようなもんだからね。まあ、徐々に変わっていくと思うよ。

INGEL なるほど。ところで、どこまでがインプロヴィゼーションなのかわたしにはわからなかったんですが…。

Takuya 昨日のライブはファーストセットはほとんどインプロヴィゼーションで、セカンドセットは既存の曲も結構やったね。僕らはサウンドやフレーズもそうなんだけど「フォーム」をインプロヴィゼーションする。それで曲が完結したら次のことをやる。また常にそういう感じ。

INGEL そのプロセスが見れたらな…。今(サウンドエンジニアの)ダニエルに聞いたんですが、今回このお店「山羊に、聞く?」でもライブやったんですね。その情報どこにも載ってなかったけど、シークレットライブ?

Takuya  そう。内輪っぽい感じだったけど、なかなかよかったよ。「WHISPER」というパーティーなんだけど、NYでも時々普通のロフトでやってて。ドアのとこ ろで合い言葉、「WHISPER」と言うと入って来れるの。警察が来るから大きい音だせないんだけど、盛り上がっちゃってなかなか静かにできない。全部イ ンプロヴィゼーションで、要するにNerveの裏バージョンみたいなもの。こちらの方がいいと言う人もいるくらい。笑

 


NERVE来日ツアーライブ@月見ル君想フ(青山)
「東京→ボストン→NY」

INGEL Takuyaさんがアメリカに渡ったのはどういうきっかけで?

Takuya  90年にボストンに行ったのが最初かな。ジョージ・ラッセルというジャズの作曲家が大好きで。マイルス・デイビスにも影響を与えた人で、最近亡くなったん だけど。ボストンにあるニューイングランド音楽院という学校で彼が教えてると聞いたので、彼に音楽理論を教わるため大学院に入った。学校のフェスティバルではジョン・ケージやSUN RA(サンラ)がゲストとして呼ばれて、それにちなんだプログラムもあったりしましたね。そこを卒業してどうしようかなと思っていた頃、友達とNYに行ったのが94年。基本的にはそれからもうずっとNY。

INGEL 曲を書き始めたのはいつ頃からですか?

Takuya 簡 単な歌とか勝手に作って歌い始めたのは子供の頃からだけど…。ピアノも小さい頃から弾いてましたが、ハーモニーやリズムってどうなってるんだろうとか本当 に興味を持ち始めて、仕事にしようと思ったのは12、3歳の頃。高校の頃からビッグバンドやスモールアンサンブルの曲を書くのが趣味だった。普通の都立高 校だったんだけど、たまたまジャズのビッグバンドがあって。それから大学へ行って、ボストンの学校に入る前も日本でビッグバンドをやってましたね。ピッ ト・インに出てるような人たち、渋さ知らズ周辺の人たちと一緒に。

INGEL トランペットもピアノと平行して演奏していたんですか?

Takuya そ う。トランペットも子供の頃からやってて吹けたんだけど、最初はピアノほどは興味なかったな。でも今は僕にとって大事なサウンド。マイルス・デイビスとか ドン・チェリーはすごく好きだけど、何と言ってもジョン・ハッセル。ブライアン・イーノとも共演してるエフェクトのトランペットを吹く人で、エスニック/ アンビエントみたいな感じかな。80年代って僕は高校生だったんだけど、その頃のポップ・ミュージックには完全に背を向けて、現代音楽やフリージャズばっ かり聴いてた。

INGEL それからボストンの学校を経て、今度はNYへ。NYに来て変化したことってありましたか?

Takuya  いろいろあったね。NYに来てからは、もっとストリートレベルの音楽がやりたいと思った。ミュージシャンだけのアイデアじゃなくて、いろいろなカルチャー から生まれて来るパワーを目の当たりにしたことが大きい。それに、それまで関わってきたアカデミックな音楽というかフリージャズの世界の「分かる人にしか 分からない」みたいな部分、やってる人たちの人種や男女が偏っているのが嫌になった。それもあって、よりアンダーグラウンドな音楽のほうへ行ったわけ。

NERVE来日ツアーライブ@月見ル君想フ(青山)
「90年代~00年代」

INGEL NYで活動していて、エキサイティングだったことは?

Takuya やっぱりNerveを最初に始めた頃だね。僕がレギュラーで入ったのは99年。Nerve自体は97、8年からだから今15年目くらいかな。最初は主にドラムンベースだけを追求してたね。その後だんだんダウンテンポのものにも興味がでてきて、僕はORGANIC GROOVES(オー ガニック・グルーブス)という別のバンドに参加したんだけど、それも面白かったよ。毎週金曜日にロフトや工場の跡地なんかでDJパーティーをしてた。いつ もあえて会場は公表せずに、番号の書いてあるカードを渡して、電話をかけるとボイスメールで「今週は○○でやるよ」ってわかるという。どんどん盛り上がっ ていって、最終的に1000人くらい来たよ。

INGEL 面白いシステムですね!しかし、なぜボイスメール?

Takuya  まだインターネットが普及するかしないかって時期だったから、何かいい方法がないかと思って。メンバーはそれぞれいろいろな国籍でさ、イタリア、スイス、 ジャマイカ、アメリカ、イスラエル…。ジプシーみたいな人たちばっかり。イリーガルな人が多くてなかなかツアーには出られなかったけどね。DJとパーカッ ション、トランペットとかが入ってちょっとダブな感じのインプロ。パーティーでは夜の11時から朝の4時まで常に音楽が流れていて、メンバーは好きなとき に演奏して好きなときに抜けて、どんどんシフトして行くスタイル。CODEK(コーデック)ってレーベルからレコードを出していたんだけど、いまだに日本 にもカルトファンがいるみたい。

INGEL Youtubeに上がってるかな?それにしても1000人ってすごいですね。

Takuya  まあ、お客さんも自由に入れ替わっていく感じだから。でも一番盛り上がってた頃、9.11があって、パーティーが出来なくなってしまった。みんながそうい う気分じゃなくなったし、随分雰囲気が変わった。それからだよ、(ブルックリンの)ウィリアムスバーグのほうでインディー・ロックが台頭してきたのは。 00~02年くらいから。とにかくいろいろなバンドが出てきて面白かった。あの辺で一番売れたバンドはTV on the Radioかな。僕が参加してるMarianne(マリアンヌ)というバンドもウィリアムスバーグのムーブメントの中の一つ。ウィリアムスバーグも面白かったよね、最初は。

INGEL …今は面白さを感じてない?

Takuya 今は人が多すぎる。昔は「村」みたいだったからさ。それにインディー・ロック一辺倒になりすぎちゃったので…。だけど、今そのウェーブも終わろうとしていて、次はまたエレクトリック・ミュージック。Nerveのお客さんの層も変わってきていて、10~20代の子がたくさんライブに来る。昔からのファンはあまり来なくなったけど。いずれにせよ、そういうふうに周りがどんどんバンドを盛り上げていっちゃう現象はいつの時代もエキサイティングだね。

「さまざまな音楽プロジェクト」

INGEL TakuyaさんはNerve以外にもたくさんのプロジェクトに関わってますよね。さきほど話にも出てきましたが、Marianneというバンドはいつ頃からやってるんですか?

Takuya  Marianneは2005年くらいからやってるね。日本人三人、なかなか強力ですよ!みんな他の仕事があるのであまりツアーには出ていないけど、今年中 にアルバム出そうと思ってるよ。自主制作だとキツいので、ちゃんとレーベルを付けてね。オフィシャルサイトに貼ってある映像は今年の3月10日、ジャパ ン・ベネフィットの中でやったライブ。僕たちはウィリアムスバーグにパフォーマンスもレコーディングもできるBPMというスタジオを持っているんだけど、 そこで去年4回程ベネフィットショーをやったんだ。後ろにビデオ流してね。あれいいよね。スローモーションで。

INGEL あれ、ライブなんですね!エキゾチックな曲調ですごく面白いです。

Marianne「Space Shami」
INGEL 最近CocoRosie(ココロージー)のサポートメンバーになったそうですね。プロデューサーとして関わったりもしてるんですか?

Takuya 2、 3ヶ月前からキーボード、トランペットで参加してる。先日カリフォルニアへ行って、7月は1ヶ月ずっとヨーロッパツアー。入ったばかりだから、まだプロ デュースには関わってないけど。TV on the RadioのDave Sitekのプロデュースで最近シングルを2曲リリースしたみたいです。
INGEL 今のCocoRosieのメンバー構成は?数年前、来日公演で見た時は姉妹とヒューマンビートボックスの彼と…

Takuya  うん、テズもいるよ。彼、いいよね!CocoRosieは以前と音楽の感じがちょっと変わって、今はベーシストがいる。リー・スクラッチ・ペリーのサポー トで知り合った、ジョッシュ・ワーナー。サポートはその三人だけど、カリフォルニアのツアーではチェロの人がいたし、7月はインディアン・ジャムバンドの 5人組が入る!

INGEL 日本にも絶対来て欲しい!今最も力を入れている仕事の一つだったりしますか?

Takuya パブリックに出てるものではそうかも。あとここ2、3年、ヴィニシス・カントゥアリアと いう人のサポートもやってるんだけど。ブラジルの音楽、好きなんだよね。昔アート・リンゼイのバンドに一緒に参加してて。彼はカエターノ・ヴェローゾのド ラマーでもあって、彼自身も80年代のブラジルでヒットソングがあったり一躍人気だった人。今はNYにいるんだけどね。

INGEL いろいろ手がけてますね。名前が多くて混乱してきた…。

Takuya 訳わかんないでしょ。何か一つでやっていけばいいんだけど、いろいろ興味がありすぎて…。それから最近、自分のスペースジャズユニットのCOSMIC BB’S(コズミック・ビービーズ)も始めました。若い頃から好きだったジャズから今まで受けたいろいろな影響を自由に取り入れて音楽を作っています。Nerveのジョンもマスタリングしてくれたり、時々ベースで参加してくれたりもしています。

 


Nerveの来日ツアーのメンバー。右からダニエル・シュレット(サウンドエンジニア)、タクヤ・ナカムラ、ジョン・デイビス(ベース)。ドラマーのジョジョは不在。@山羊に、聞く?(代官山)

「ムーブメント」

INGEL Takuyaさんの活動は常にNYの音楽ムーブメントとも連動しているような…。

Takuya  おおまかに言って、ダンスミュージックとロックのブームは常に交互にやって来る。アメリカのことしかわからないけど、これからまた90年代的なエレクト リック・ミュージックがしばらく盛り上がって、またロックに戻ってくるんじゃないかな。今このエレクトリック・ミュージックの流れの中で、Nerveも もう一踏ん張りやろうと思ってる。ドラムンベース、ブレイクビーツ系の音楽で僕らのようなスタイルでやってる人たちは少ないから。あと、ダンスミュージッ クやロックではないけど、ジャズも若い世代の間でも盛り上がりそうな兆しがあるね。個人的にはそれがもうちょっとSUN RA的になってくれるといいなと思ってるけど。

INGEL SUN RA的ってどういう意味で?

Takuya  呪術的、セレモニー的なね。あ、呪術的といっても暗いものじゃなくて、SPACEね。実はそういうものを目指して僕自身がずっとやってるわけで。まあ僕に 関して言えば、そこを貫いていれば別に古くなったりしないという考え。いつの時代においても古くならない音楽をやりたいですね。

 

(文章/写真:INGEL)

 

_______________________________________________________________

 

Takuya Nakamura(中村 卓也)

東京出身。コンポーザー、プロデューサー、トランペット/キーボード/その他様々な電子楽器を演奏するマルチプレイヤー。
1990年、留学をきっかけに渡米。これまでプロジェクトに関わったミュージシャンはQuincy Jones、Lee Scratch Perry、George Russell、The Streets、Arto Lindsay、Vinicius Cantuaria、Jojo Mayer’s Nerve、Brazilian Girls、Organic Grooves、Bob Moses、John Scofieldなど。多様な音楽ジャンルのプロジェクトを通し、現在はNYを拠点にアメリカ、世界各地で音楽活動を行っている。

 

 

Takuya Nakamura:http://www.takuhx.com/

My Space:http://www.myspace.com/takuhx

FACEBOOK:https://www.facebook.com/spacetakuya

Nerve:http://www.jojomayer.com/

Marianne:http://marianneband.com/

 

広告

comment

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。