JON THE DOG @ NIGHT ZOORASIA!
「ズーライブ」with liquidbiupil & Captain Stag & Yumelight
よこはま動物園ズーラシアでは夏期限定で「ナイトズーラシア」と称し、20時半まで園内の開放を行っている。
動物の夜間の生態を見てみようという催し。
ミュージシャンの JON(犬)さんが「ナイトズーラシア」でライティング・アーティストの方々とともにライブをすると聞き行ってきました、初・ズーラシア!「ズーラシア」という名前は「動物園 (Zoo) とユーラシア (Eurasia) を合わせた造語で、ユーラシア大陸の様に広いという意味である」とのこと。なるほどね !
いきなり、入り口の前にこんなメッセージが。数年前わたしの親もあやうく引っかかるところでした。「森の貴婦人」とも呼ばれるオカピ。「振り込め詐欺」とは無縁の生活を送っているはずですが、様々な悪がはびこる俗世間に暮らすわたしたち人間に警笛を鳴らしてくれています。有り難いことです。日本ではズーラシアが初めてオカピを飼育した動物園だそう!お土産屋さんもオカピグッズが50%くらい占めています。
動物を眺めたり、ハンバーガーやソフトクリームを食べたりしながら園内をぶらぶら歩いているとズーライブの会場である「みんなのはらっぱ」が見えてきました。
野外ステージではすでに liquidbiupil & Captain Stag & Yumelight によるライティングが始まっています。4方向からカラフルな光が…。
清掃スタッフの方々も「今から一体何があるのかしら〜」とおしゃべりしてるんでしょうか。
お客さんは動物園という場所柄家族連れ多め。
公演は二回あり、一回目はまだ明るかったのでサイケデリックさはマイルドです。
夜はこれから!
「どこから登場するんだろう?」と思っていたら後ろのほうがざわつき始めました。振り返ると、向こうからJON(犬)さんが芝生の上をてくてくやってきました。アウトドアで見るその姿はライブハウスで見るよりさらに異質な存在感を放っているような…。他のお客さんからは「かわいいーっ!」という声が。
きちんとお辞儀。一緒にお辞儀している子がいました。えらいですね。
一曲目「としとったら」が始まり…
あたりがだんだん薄暗くなってくるとともに、ファミリー層がJON(犬)さんの着ぐるみのリアルさと、独特な世界観に気づき始めていくのがわかります。前の方で釘付けになっていた子どもが「あれ?」という不安げな表情でお母さんのところへ戻ってきたり…。
わたしの横で交わされる二人の子どもの会話。
「絶対犬じゃないよ。犬はあんな耳じゃない!」「じゃあなに?」「クマだよ」
「オオカミだよ」と教えてあげたかったが、風のようにどこかへいなくなってしまいました。
ディリリィー…と、けだるく響くオルガンのマイナー調。子どものようなかわいい声で歌われるのは、心にひっかかっていることだったり、やり場のない気持ちだったり、飼い猫「オチョナンさん」のことだったり。場面の切り取り方も「そこをクローズアップするの!」と思わず笑ってしまう。
で、何が言いたいかというと…JON(犬)さんそのものが芸術作品だ!
白いドーム型のテントの中に幾重にも光、模様、色が重なり、うごめきあう。わたしは動く絵画を見ていた。それを見ながら思考をどこかに飛ばして楽しむというよりは、そこに鎮座して呼吸だけを続けたくなるようなどっしりと濃密な時間。
サイケデリックでスペイシーだけど、影絵の懐かしいテイストが足踏みオルガンの古びた音色と共鳴する…。澄んだ空気、虫や動物の声などの野外の感覚と一緒になり、普段なかなか味わうことのできないような見事なコラボレーションでした。ミュージシャンが演奏する場所はライブハウスだけではもったいないな、とあらためて感じました。今回のズーライブのように普段あまり見てもらう機会のないお客さんを前にして、その場所でしかできない表現が生まれてくる感じ。場所×人、人×人のコラボレーションの可能性は無限にありそうです。
おまけ
ズーライブのあと、「ナイトズーラシア」を楽しみました。けっこう照明が少なくて真っ暗なところもありスリルがありました。動物を紹介します。
アフリカタテガミヤマアラシです。アフリカ中部に生息しています。箱と照明の効果により「聖なる何か」のように見えます。「何か」はわかりませんが…。寝ているのか動きません。
アカカワイノシシです。中部アフリカに生息しています。こちらも「聖なる何か」ではないかと思わせる「何か」があります。ちょっとレンブラントの絵のようですね。
オカピです。コンゴ民主共和国に生息。機嫌が悪いのか全然こちらを向いてくれません。一番の特徴であるお尻の模様だけはしっかり目に焼き付け、思い出に刻み込みました。
振り返ったところにオカピの頭蓋骨がありました。また来よう。
(文章:INGEL 写真:RINO/INGEL)