檻之汰鷲  アーティスト インタビュー 

檻之汰鷲  アーティスト 「Before After The End」インタビュー

UPDATE 2012/04/04

 INTERVIEW                           2012.3.23

 檻之汰鷲 ORINOTAWASHI   アーティスト

檻之汰鷲によるペインティング、コラージュ、文章で構成されたグラフィック・ノベル「Before After the End」が50部限定で発売される。音楽グループ「NOINONE」のメンバーでもある彼に、2002年から始めたという創作活動について話を聞かせてもらった。彼の言う「もうひとつの世界」とは…

 
「はじまりについて」

 

 INGEL  何かきっかけがあって創作するようになったのですか?

檻之汰鷲(以下:檻)  交通事故に遭ってから人生が変わったんだ…。人生で3回も遭っているんだけど、2002年の9月11日、アメリカでテロのあった翌年、車で熊本に行く途 中、高速道路で3回目の交通事故に遭った。ちょうど車に乗っていた人たちみんなが寝ていて、前のトラックにぶつかった。いきなりドーンという音が聞こえて 「イデーーッ!」と思ったら車が横転していて。背骨が折れてしまっていて、そのまま彦根の病院に2ヶ月入院した。もしかしてこのまま動けなくなったらどう しようかって不安だったよ。そして退院できたその年の冬、あるパーティーに行ったんだけど、僕が帰ってから友達から電話がかかってきて、バンドメンバーの 一人が亡くなったのを聞いて。みんなで遊んでいて突然倒れたんだ。とてもショックだった。そのとき「生きる」とか「死ぬ」とかいろいろなことを考えたし、 内面がすごく深くなって自分が変わったのがわかった。音楽について、他の創作について、その年に自分のすべてが決まったと言える。それ以前は「能天気な パーティー野郎」だった。ただ、今自分がそこにいることしか感じることができなかったんだ。

INGEL 内なる声が聞こえたの?

  そうだね。2ヶ月くらい寝たきりで結局1年くらいは仕事もできなかったから、その間にいろいろな本を片っ端から読み漁って勉強して、もう一回自分の中で世 界をとらえ直す作業をしたことも大きい。歴史や、宇宙を感じるようになったし「目に見えているものだけで世界が成り立っている訳じゃない」ということを事 故によって身をもって体験した。それからは音楽も真面目にやるようになった。

 

INGEL たとえばどんな変化が?

  NOINONEは、99年頃からずっとワンコードでセッションするようなインストバンドだったんだけど、2002年以来、僕が歌詞を書いて歌うスタイルに 変わった。歌がうまいわけではないから、言葉を並べて、ちょうどラップするようなスタイルを選んだんだけど。言葉の中の言霊みたいなもの、スピリット、ソ ウルみたいなものを大切にするようになった。歌詞だけでなく言葉には結構気を使うようになった。自分が周りの人に「大変だ」とか「疲れてる」と言うと、言 霊が自分に跳ね返ってきて本当にそうなってしまうから、なるべく言わないようにしているよ。「疲れる」は「憑かれる」を語源としている説を聞いてから「お 疲れ様です」とは書かなくなったよ。

 

INGEL おお…そうなんだ。「憑かれる」はちょっと怖いね…。

NOINONE

「NOINONE」

INGEL 話はさかのぼるけど…NOINONEというバンドがどうやって始まったのか教えて。

  NOINONEを始める前の僕はハードコアバンドのボーカルをやったり、ノイズバンドをやったり、家で一人でカセットを作ったりしていたんだけど、90年 代のレイブのムーブメント*1 が訪れてレイブカルチャーを体験した。そのとき遊んでいた仲間がNOINONEの母体のようなもの。10人くらいでひたすら反復してトランシーな音楽を やってたよ。知り合いの先輩バンドAOAに影響を受けて「オレたちでもできるかも。お前何の楽器やる?」って。最初メンバーが12、3人くらいいて、なぜ か楽器のできない人はシンセをやることになって、バンドに3人シンセがいたり。ある時ライブが終わったあと知り合いの先輩バンドのひとに「今まで見たライ ブの中で一番ひどかった」って言われてね。笑 でもそのひとがバンド名の名付け親。外国人が名前を読むと首をかしげて喜ぶよ。当時はインプロビゼーション というものを甘く考えていたなと反省して、それから少しは真面目に作曲するようになった。今のメンバーは、Voの僕、シンセのヤス、Drのトリッキー、 Bassのミヤの4人。結成当時とは、まるで違う音楽をやっているよ、ハードコアパンクのような勢いある音でヒリヒリしているよ。

 

INGEL 音楽作りで影響を受けてるものってなんだろう?

 

  始めたばかりの頃はみんなジャーマン・ロックが大好きだったね。今もコニー・プランク*2 が手がけたものに関しては、まだ聴いてないものを探し出してきたりする。あとヤスと僕がDJしていたのが大きいかな。いろんな音楽を掘っていたよ。みんな よく音楽の話はするし、けっこうメンバー同士の音楽の趣味は合っているよ。自分はラップをやるから、新しいタイプのヒップホップはチェックしてるし、身の 回りにいる他のミュージシャンやアーティストのやり方も参考にしたりしている。みんなすごいスキル持ってるからさ。最近はサンプラーを使ったり、カオス パッドでエフェクトをかけながらラップをやるようになった。

 

INGEL 何のためにパフォーマンスするんだろうと思うことはある?

 

  思うこともあるね。バンドの連続性のようなものがよくわからない。定期的に活動していく中でファンが増えていって…という活動形態を自分たちがとれている とは思えなくて。10年以上も活動してアルバム1枚も出していないし、もう今は「やり続けることが目的」ということに落ち着いてるけど。笑 でも、やっぱ り自分には表現したいことがあるから。「変身すること」が大好きなんだ。それはライブのときの大きな楽しみでもあるし、ハードルでもある。パフォーマンス がシャーマニックになっているときは、自然に言葉が出てくるし、気がついたら終わってる。それが見ている人にも喜ばれる状況が一番いいんだけど。バンド活 動って不思議な体験だと思うよ。巨大な妄想をみんなで追っかけるってことだから。けっこう強烈な狂気だと思うんだよね。笑

「多聞天」「ALICE」
「アート」

INGEL では、音楽以外の「アート活動」と言っていいのかな?今やっているペインティングやコラージュ、文章での表現を始めたのは、事故に遭ったことがきっかけなの?

 

  そう。もっと自分を信じて、やりたいことをやろうと決めたんだ。コラージュに関してはそれ以前から、気づいたらやっていたけどね。以前からアートへの興味 はあったし、音楽を掘っていったら、あるところでアートに繋がる。現代音楽家のジョン・ケージ*3 に影響を与えたのがマルセル・デュシャン*4 だと知ったときに自分の中でアートと音楽がリンクして。マルセル・デュシャンと作家のレーモン・ルーセル*5 も繋がっている。それらが繋がってからどれも意識するようになった。バンドでやってる曲の歌詞と自分の世界観は直接リンクしてるし、物語の中ですっごく長 いことかけて言ってることを、ライブでは30分のダイジェストで言ってるようなところがある。

 

INGEL それぞれのアイデアは、すべて同時に浮かんで来るものなの?

 

  本に関して言えば、僕は勝手に「グラフィック・ノベル」と呼んでいるんだけど、絵と文章が曖昧な関係性のまま補い合いながら世界を創っていくコラージュ的 な感覚というか。絵は見た瞬間に全部の情報が入ってくるけど、文章は一文字一文字を追うことでその世界に入っていく。僕は文字が大好きで、世界中の文字に 関する書籍を集めているんだ。文字って究極のデザインだし、そこには意味がこめられている。アルファベットだったら24文字の組み合わせで世界を描くこと ができるんだよ!それは絵の具よりもある意味すごいことだと思ってる。そうやって自分のなかで文字についても深く読み砕いて書くもんだから、他の人に理解 してもらうには苦労するよね。

 

INGEL 見てくれる人にその世界をより的確に伝えたいというより、自分自身がそれを見てみたいということなのかな。作品を誰かと共有したい気持ちはある?

 

  最初は共有してもらいたいという気持ちはあまりなかったの。でもマルセル・デュシャンが「作品を作ることは誰でもできるけど、その作品が芸術かどうか決め るのは見る人だ」と言ってて、なるほどと思ったんだよね。だから人に見てもらえるように作業をするのと、見た人にそれが何か伝えられるクオリティに仕上げ る、この二つはやっぱり作り手の責任として、クリアして行きたいと今は思ってる。そういう訳で文章に関しては、さらに時間がかかるんだけど。できるだけ頭 に浮かんだものを、文字や風景で形にして「その世界」を残したい。自分が生きてるのって長くてもほんの80年くらいでしょ。でも作品は運がよければ、数百 年と残るかもしれない。だから、それを目標にしてる。どこかに埋めたりしたほうがいいのかもね、大仏の下に穴を掘って埋めておいて、1000年後に間違っ て発掘されたりさ。笑 死海文書*6 みたいに波紋を呼んだりしたら嬉しいな。未来にフェイクの過去像を残すの。

 

INGEL 未だに世界中で何だかわからないものって出てくるからね…笑

 

  そういうオカルティックなものってすごくいっぱいあるけど、誰かが「オカルト」だって決めてるだけで、どれが本当か歴史をたどってもよく分からなかったり するじゃない。何となく今はこういう歴史とされているけど、もしかしたら…という可能性もあるかもしれない。今から100年前、1912年の人たちがやっ たことで今の自分にも伝わってきている物事についてよく考えているよ。今から100年前というのはライト兄弟、アインシュタインの頃。宮沢賢治や夏目漱石 も。そしてこれからさらに100年後、向こう側はすごいことになってるんだろうなと思う。息とか普通にはもうしていないかもよ。それくらいの時を経ても通 じる普遍性のようなものを作品では表現したいな。

 

「Crystal」「U」

 

「Before After the End」

INGEL 今回の作品集のタイトルの「Before After the End」は、そういう考え方も含んでいる?

 

檻 過 去から未来みたいなね。そもそも「Before After the End」という言葉は海外の調味料のフタに書いてあったのを偶然見つけたんだ。鏡に映る自分を見て、こっちとあっちどっちが自分だか分からないぐらい混乱 した時に。多分「仕上げの前に」みたいな意味なんだと思う。言葉の響きが面白いなと思って。

 

INGEL もはや「End」がどこにあるかわからない、もしくは「無い」ような感じだね。

 

  そうでしょ。実はこの物語は自分が事故にあってから作り始めて、どんどん内容を変えながらずっと書いていたんだけど人にも理解されないし、もう限界かなと 思ってやめようかなとも思っていたんだよね。そしたら3.11が起きて、驚くべきことにこの話とシンクロしてしまったんだ。市民には内緒で政府が進めてき たプロジェクトが失敗し、東京の地下で爆発があって、23区内には住めなくなったという設定なんだけど…。

 

INGEL 予言してしまったと?

 

  たまたま自分が考えていたことが、歴史的な出来事にリンクしてしまうなんてことが起こるのかと驚いた。SF作家のカート・ヴォネガット*7 が言う「カナリア芸術論」というのがあって。炭坑を掘るときにカナリアを最前線に放って掘って行くんだけど、カナリアはガスなんかによる空気の変化に敏感 で、いち早く危険を察知する。カナリアが騒いだら「危ない!」と思って人間が逃げる。つまり「芸術家はその時代のカナリアの役割をしなければならない」と 言ってるんだよね。僕も「カナリアみたいにならなきゃ」と思ったんだ。どこかしら人の役に立つことをしたい。

 

INGEL 警笛を鳴らす役割だよね。具現化する前にその可能性をどこかで拾って…。なぜ芸術家は自分の専門分野ではないのに、そういうのをキャッチしやすいのかな。やっぱり社会的な枠組みにあまりとらわれていないから?

 だからこそ俯瞰して見えるのかもね。だから僕も勝手なこと言えるわけだし。笑 。

 

(文章:INGEL アーティスト写真:RINO)

 

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注*

 

レイブのムーブメント*1

人 里離れた山奥や廃墟なでにサウンドシステムを設置してゲリラ的に行われるイベント。80年代後半にイギリスで発生したムーブメント、センカンド・サマー・ オブ・ラブが源流。日本でも90年代に口コミや地図のみが書かれたチラシだけの情報で開催されていた。 2000年代になると次第にフェスティバルと統合されていく。

コニー・プランク*2 (1940.5.3 – 1987.12.18)

1970 年代のジャーマン(クラウト)・ロックを語る上で絶対に外す事の出来ない超重要人物。ある時はエンジニア/プロデューサーの立場として、またある時はアー ティストとしての立場として、ジャーマン・ロックの歴史に残る名作製作の現場に携わってきた偉人。代表作『NEU!(全アルバム)』『ZERO SET』

 

ジョン・ケージ*3 (1912.9.5 – 1992.8.12)

音楽家、詩人、思想家。沈黙を音楽にした代表作「4’33」をつくった。またMUSICとMUSHROOMが辞書で並ぶことからキノコ研究家にもなる。活動は多岐にわたるもユニークな思想に貫かれている。   既にご存知の方へ  (注:知らない人は読まないように)

マルセル・デュシャン*4  (1887.7.28 – 1968.10.2)

20世紀美術に決定的な影響を残した偉人。30代後半からは制作をほぼしなくなりチェスに没頭する。逆さにした便器をアートに見立てたり、偽名の使用、女装をするなど、美術の枠を拡張させた。

 

レーモン・ルーセル*5 (1877.1.20 – 1933.7.14)

フ ランスの小説家、詩人。言語実験による奇想に満ちた文学作品を残した作家。代表作『アフリカの印象』は、ある文章のなかの韻や同音異義語などを駆使させ、 文字と文字の分節を変更したりして別の文章へとシフトさせていく。言語が生み出していくクローンを綱渡りさせながら、「作品は、現実のものは何一つ、まっ たくの想像から生まれた組合わせのほかは、世界と精神についてのいかなる観察も含んではならない」世界を創造する。

 

死海文書*6

1947 年から1956年にかけて、イスラエルの死海北西の要塞都市クムランの近くの11箇所の洞窟で発見された、ヘブライ語聖書の断片を含む約850巻の写本の 集まりである。文書は、ヘブライ語のほかにアラム語・ギリシア語で、紀元前2世紀から紀元後1世紀の間に書かれている。この時代に書かれたものとしては事 実上唯一のユダヤ教聖書の文書であり、聖書本文の内容が写本を通して劣化されることなく比較的正確に伝えられてきた歴史を証明するものとして、貴重な資料 であるとみなされているがその全容は未だ解明されていない。

 

カート・ヴォネガット*7 (1922.11.11 – 2007.4.11)

人類に対する絶望と皮肉と愛情を、シニカルかつユーモラスな筆致で描き人気を博した。現代アメリカ文学を代表する作家の一人。村上春樹に影響を与えたとしても知られている。代表作『猫のゆりかご』『国のない男』

information

 

 

「BEFORE AFTER THE END」

2002 年からこっそり空想されてきた<もうひとつの世界>が、
3.11 を経て現実とリンクしてしまったという、
22 世紀に遺すグラフィック・ノベル。
「BEFORE AFTER THE END」
原宿TOKYO CULTUART by BEAMSにて期間限定販売
限定50 部 2012.4.1 → 4.24 ON SALE
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前3-24-7 3F
営業時間11:00 ~ 20:00 問:03-3470-3251
檻之汰鷲作品以下に展示してあります。
作品展示:
hairmake – CALM
150-0001 東京都渋谷区神宮前6-13-8 小花ビル2F
OPEN 12:00-21:00 問:03-6419-3363
湘南フレンチ&ナチュラルカフェ
taste of Living Room
神奈川県藤沢市片瀬3-14-31 江のはビル2B
12:00 ~ 15:00(LO),17:00 ~ 22:00(LO) 問:0466-47-6724
 
 
NOINONE LIVE
 
 
 
檻之汰鷲 LIVE PAINTING
 
檻之汰鷲 ORINOTAWASHI HP: http://orinotawashi.com/

 NOINONE HP: http://noinone.tumblr.com/

 

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