劇団【犬と串】主宰 モラル インタビュー

劇団【犬と串】主宰 モラル インタビュー

UPDATE 2011/12/15 15:51

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今年の夏に観た、犬と串の「愛・王子博」という作品が忘れられない。この世界を陰で操る権力に対し、はみ出し者たちがめちゃくちゃなエネルギーで反乱を起こすコメディ。彼らはひたすら自分が自分であるためにわめき散らし、あらゆるタブーを犯してでも闘うことを諦めない。登場人物ほぼ全員がド変態であるにもかかわらず、この説得力はなんだ…。

あの日の衝撃は半年たった今も鮮やかによみがえり、わたしに勇気を与えてくれている。さあ、「犬と串」の主宰、モラルさんって一体どんな人?新作「ウズキちゃん」ってどんな作品?聞いてきました!劇団【犬と串】主宰 モラルさんにインタビュー! @ 早稲田

「犬と串のはじまり」

INGEL 演劇を始めたのは高校生のころですか?

モラル はい。うちの学校は中高一貫校だったのもあって「中三」という中途半端な時期から始めました。もともとはバドミントン部。早稲田大学で演劇研究会というサークルに入っていたんですが、三年生の終わり頃に(劇団員の)鈴木アメリや満間昂平たちと劇団を作ろうということになって。僕はもともと役者だったんですが、そこで「じゃあ(作品を)書いてみるよ」と言って始めました。一番最初に旗揚げ前にやった公演のタイトルが「犬と串」で。そこから劇団名もとって。

INGEL 「犬と串」という作品はどういう内容でしたか?

モラル 「忠犬ハチ公」がなぜずっとご主人様を待っていたかというと、毎日焼き鳥をもらっていたからだっていう説があって。それもエピソードとして出てくるんですが、まあ美談を全部ぶっ壊してやろうという芝居でしたね。それが2007年の夏、4年前ですかね。今の7人の劇団員も早稲田の劇研のメンバー。

INGEL みんなすごく仲が良さそうですよね!Ustream「犬と生」見てても伝わってくる。

モラル まあ、一緒にいる時間が圧倒的に多いですからね…。

INGEL 仲がいいと言えば、今年7月の公演「愛・王子博」のとき出演されてた高校時代のお友達、椎木さんと公演期間中一緒に暮らしてたとか?

モラル 椎木君は地元の福岡で違う高校の演劇部だったんですよ。今も彼は地元で劇団をやっていて。犬と串とは全然違う感じの芝居をやってるんですが、根がアツくて「やるとなったらやるぞ」と上京してくれました。一ヶ月くらい僕のワンルームで一緒に暮らしてました。毎朝椎木君が米を研いでる音で目が覚めて…。同じ稽古場に行くんだけど、毎朝ちゃんと二人分のお弁当を作ってくれました。忙しい時はおにぎりにしてくれたりとか。笑 最後の夜は二人とも何か切り出すのが恥ずかしくて「ゲームしよっか」とか言って…無言で二人でゲームして。笑

INGEL あの、何のゲームしたんですか?

モラル マリオカートです。

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「 愛・王子博」

INGEL  前作「愛・王子博」について聞きたいです。ポップでエネルギッシュなコメディでしたが、かなり社会風刺的な内容でしたね。ちょうど作品が書かれた時期って地震、原発事故をきっかけにして日本の問題がどんどん出てきたときじゃないかと思うんですが、意識的にそういうものを描かずにはいられなかったということでしょうか。

モラル  そうですね…。 意識的に社会風刺をしたかというと違うかもしれない。不謹慎な言い方かもしれませんが、どんどんわけのわからなくなっていく社会を見ていて、演劇というものを作る状況として「遊びやすくなった」と感じました。それまではもっとミニマムな感情を壮大にして行くとか、そういう感じでしたから。今どの事象に対してというのはないんですが、このモヤッとした日本と闘いたいという思いはありますね。ただ、もともとネガティブなものをやるのはあまり好きじゃないんです。かといって、現実を全部忘れて明るくファンタジックにやるのも嫌なんですが。政治や経済についてよく知らないからというのもあるけど、僕は僕の感性で切り込みたい。

INGEL 現実的な部分とファンタジックな部分が絶妙なバランスで融合していて説得力があったのは、モラルさんの感性そのものだったからかも…。知ったかぶりをしていないから嘘がないというか。それにしてもあの作品は衝撃的にハッピーなラストだったじゃないですか?隣の席の女性は完全に下を向いていたけど。笑 あれは役者さん側の抵抗とかなかったですか?

モラル 直前で言い出すと、絶対抵抗されるなあと思ったので最初に言いました。その時点で「じゃあ僕降ります」っていう人はいなかったですね。

INGEL すばらしい仲間!

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「ウズキちゃん」

INGEL では、今回の作品「ウズキちゃん」について。タイトルはマンガの「あずきちゃん」から?

モラル そうです!大好きなんです。女の子のわがままさが全部つまってる。今回実はそれを一番ベースにしています。少女漫画的なものと言いますか。理不尽なことがいっぱい起こって何でかわからないけど楽しくなっちゃう!みたいな女の子のナンセンスコメディが作りたくて。ポップな感じが出せればと思っています。

INGEL あの、「ウズキ」って性的な意味でもあるんでしょうか?

モラル いや、意外と下の方ではないですね。どっちかっていうとポップにウズウズしちゃう、春が来てウズウズしちゃう!みたいな。今まで女の子がメインの話だと、第一回公演で「メスブタ」という作品があって…。僕は男子校に行っていたんですが女子に対して結構トラウマがあるんです。ブスの自意識過剰が一番嫌いで…。自意識過剰で男を寄せ付けない女の子が「無菌ブタ」で、それがだんだん男の色に染まっていろいろな雑菌を植え付けられる、みたいな芝居で。笑 最後は月に帰っていくんですけどね。

INGEL 何やらすごいですね。笑 「メスブタ」がモラルさんの苦手な女性像だとしたら「ウズキちゃん」は理想の女性像だったりするんですか?

モラル 月日が経ち僕も大人になったのか、そういう女子性をちょっとは愛せるようになってきましたね。昔はそういうのを徹底的にぶちのめしてやろうと思ってたんですが。笑 もう今回は逆にそこに憧れを持って臨んでます。

INGEL 犬と串での四年間を通して、愛憎がひっくり返りつつあるんだ!ところで劇団員の女性は現在、鈴木アメリさんだけですよね。彼女はモラルさんの中で憧れている女性を象徴していたり、反映させたりしているようなところがありますか?

モラル   アメリはすごく不思議な女優。(話の内容的に)叩くにしても、憧れるにしても、僕の中でモヤモヤしている女性像を立体化させたときにすごくうまく演じてくれるんですよね。

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「モラル」

INGEL ところでずっと気になっていたんですが、「モラル」という名前の由来について教えてください。

モラル 僕らが芝居を始めたときって、人間の内面に向かっていくようなドロドロした芝居が多かったんですよ。それに逆らってやろう、という気持ちでポップな芝居をやっているんですけど。だから名前も本名じゃなくて完全にフィクションにしてしまおうと。あんまり長い名前は嫌だなと思ってて…。

INGEL 「ケラリーノ・サンドロビッチ」とか…?

モラル  あれは素敵だと思いますよ!あれぐらいセンスがないと長い名前って難しい。で、インモラルな芝居を目指しているので逆に「モラル」に。モラルがある人はまずつけない名前ですよね。

INGEL 実際に「モラルさん」って呼ばれることに抵抗ないですか?

モラル いえ、そう呼ばれたいですね。でも、一番恥ずかしいのは芝居を予約してもらって観に行くときに受付で「モラルです」って言ったら「(予約)入ってないですね…」「森山かもしれないです」「あ、ありました」というパターンですね。向こうもきっと「何こいつ」みたいな…。あの時間なんなんだ…。モラルと名乗った時間を消したい。笑

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「負のエネルギー × ポップ」

INGEL モラルさんという人物の形成に大きく関わっているものって何ですか?

モラル   やはり「負のエネルギー」が自分を大きく支えてると思います。小学生のとき中学受験をしたんですが、みんなが遊び回ってるときに僕は塾に行って。その先にきっといいことがあるって信じていたけど、その先6年間男子校で…。いいことなんて一つもなかったんですよ。運動もあまりできるほうじゃないし…。 チームに分けてサッカーとかするじゃないですか。じゃんけんでこう、メンバーをどっちのチームにするかとっていくやつとか。当時クラスに一番運動ができる子がいたんですが、彼をとるとバランスが悪くなっちゃうんですよ。だから彼をとるときは僕も一緒についてくる、みたいな…。笑 いじめとかじゃなく、自然な成り行きで淡々と。笑 本当にみんなにとって毒にも薬にもならない人間だったのかなと思います。芝居を始めるまで、自分の中で渦巻いているものを出す場もなかった。とにかくこの世に恨んでるものが多すぎて…。

INGEL …。何か心の支えのようなものはあったんですか?

モラル そうですね。王道のエンタテイメントやポップなものがすごく好きでした。小沢健二さんの音楽が好きです。「LIFE」というアルバムを聴いて「すごい!」って思って。聴いたのは大学に入ってからですが。僕自身もポップではありたいし、かといってリア充みたいにもなれないし…。その、混ざっている感じですね。

INGEL 他に好きなものはありましたか?

モラル プロレスは好きでしたね。同級生がデートしてるときに、僕は血の出てるレスラーに色紙を当てたり…。魚拓みたいに。今も実家に飾ってあります。

INGEL 格闘技が好きな感じは前回の作品にも出てましたね。「漢」っぽい感じ。劇団員のみなさんも筋肉がついてて、身体能力高そうな方が多そうでしたね。そういう人々への憧れみたいなものがありますか?

モラル ありますね、やっぱり。だから劇団員はみんな体力バカみたいな人たちばっかりですね。でも常に恐怖ですよ。厳しいことを言いながら「こいつ空手何段だっけ…」って思ってる。笑

INGEL いつ一揆が起こるかわからないもんね。 笑

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「これからのこと」

INGEL モラルさんがこれから目指すところ、どういう風に演劇の活動をしていきたいか聞かせてください。

モラル そうですね、けっこうメジャー思考は強いです。ある種今これぐらいの活動規模だから許されていることがありますが、この場所だけで止めておきたくはないです。エッジがきいてるものを大きいフィールドに持って行くとしたら、どういう変化が必要なのか考えて行きたいですね。

INGEL 確かにあのままをメジャーな場所に持ち込むのは難しそう。きっと表現に制約が出てきますよね。

モラル まあ、前回のラストみたいなのは完全にアウトではあるんでしょうけど…。でも昔のテレビなんか見ていたら、ビートたけしが一人でルールを変えちゃったみたいな部分があるじゃないですか。まあどこかで最低ラインの折り合いは付けていかなければならないだろうけど、基本的には僕らのやりたいことをどう認めさせていくかっていうところですかね。

INGEL うんうん。では、今後こういう演劇が作ってみたいとかありますか?

モラル 小説が原作の舞台とかやってみたいですね。具体的に言うと、そうだな…舞城王太郎さんをやってみたいですね。もともと僕の物作りに影響を与えているベスト5くらいには入る作家の方です。ぶっとんでるんですけど、健康的。バンバン人が死んだりするし、めちゃくちゃなことが起きたりするんですけど、最後はハッピーというか。まあ倒錯した感じはするんですけどね。

INGEL 犬と串もそういうものを目指してたりしますか?

モラル そうですね。いろんなことが起きるんだけど、最後は嫌な感じでは終わりたくないかな。

INGEL ハッピーエンド最高です。「ウズキちゃん」もそうだといいなあ…。

(文章:INGEL 写真:RINO)

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犬と串 case.7「ウズキちゃん」

作・演出:モラル

会場:大隈講堂裏劇研アトリエ

期間:2011年12月14日(水)~25日(日)

前売 2000円/当日 2200円

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