Live Report! OFIR GANON w/ ALEX NELSON

Live Report!「OFIR GANON w/ ALEX NELSON」

UPDATE 2012/05/16 17:40

NYブルックリン在住 Emi Nipsによる現地ライブレポート!

OFIR GANON w/ ALEX NELSON

Mar 18  2012 Zebulon
長〜い冬が終わりを迎え、暖かい日の増えてきたNY。暖冬だったとはいえ冬だったことには間違いないので、どこにも行けなかったような私にとってはやはり「ようやく今回も乗りきったか」感が否めない。
東京に比べてNYはやっぱり小さいと思う。というのは、工夫してみても普段 の生活の中で楽しめる場所の範囲が限定されてしまう。例えば東京だったら、西荻をエンジョイする人が中野、新宿、下北沢、新代田、渋谷、原宿、さらには代 官山や六本木などで遊ぶことも少なくないだろうと思う。その各地域が異なった個性を持っていて、それぞれ違う雰囲気を醸し出しながらもDIY系アンダーグ ラウンド・ミュージシャンやアーティストが好みそうなカフェやギャラリー、ライブハウスなどを備えている。
しかしNYの場合は、土地が高いためか、アンダーグラウンド・アートをサ ポートするような地域はどうしても限定される。特に大きな音を出すライブハウスで「音が悪くない」「雰囲気が好き」などの個人的な好みも含めるとなると、 行く場所が決まって来てしまうのね。Williamsburg, Bushwick, Greenpoint、足をのばしてもマンハッタンのLower East Side。いやもちろん、知らない場所はとくとある。北はブロンクスやハーレムから南はブルックリンのFlatbush(フラットブッシュ)や Ditmas Park(ディットマス・パーク), Rockaway(ロッカウェイ) まで。そういった意味では逆にムチャムチャ広いとも言えるのだが、NYの場合そこに「異なった個性」なんて言葉では片付けられないカルチャーそのものの大 きな違いがあるため、その広範囲を自分の遊び場に含めるのが難しいのだ。
ブロンクスやハーレムのDIYのベースメントからは毎週素晴らしいラッパー が誕生し、 Flatbushのアイランド・コミュニティーでは夜な夜なコアなレゲエが流れているはず。それは確かなのだけれど、いくら強気な私でも一人で良く分から ないカルチャーのよく知らないミュージシャンのライブに足を踏み入れてみるほどの根性はない。またそういう場所は遠いし交通も不便だし、あまりにカル チャーが違うため何処までが「文化の違い」で何処からが「本当に危険」なのかもよく分からないし。(パッと見には全体的に怪しいし。)知ったら面白いだろ うと思いながら、そういった場所へ精通している友達を待つのみに終わる。
そんなわけで、盛り上がりに欠けていた冬中、お決まりのハコと似通った連中の間を巡回し過ぎて発狂寸前の私は、とにかく知らない顔ばかりで落ちつける所で一杯呑みたいと思って、久しぶりにZebulon(ゼビュロン)に行ってみようと家を出た。
ZebulonはDIYではないがやはりWilliamsburgの中心に あり、エクスペリメンタル・ミュージックやワールド・ミュージックなど様々な楽器をクリエイティブに使ったアーティストを心からサポートするオーナーの バー。木造りの雰囲気もいいし、毎日ライブが行われている。ビールやウィスキーの種類も凝っているし、ちょっとした食べ物もおいしいので、ライブ目当ての 客とちょっと呑みに来ている客とが半々ぐらいかも。
そしてここの一番良いところは、入場料がタダなのにライブをしている音楽に まずハズレがないこと。好みは人それぞれだとしても、常に有能なミュージシャンがアーティスティックなサウンドを披露しているのだ。お金を稼げるミュージ シャンと素晴らしいミュージシャンは別ということ か。まんべんなく埋まっていて、知った顔のいないことに満足した私はワイルドターキーなぞ頼んで、ふ〜っとストレスを流しだすべくギターの音に耳を傾け た。
少し異国な美しい低音をソロで弾いているお兄さんはOfir Ganon(オフィア・ガノン)といい、色々なミュージシャンとコラボをしながらZebulonで演奏しているそうだ。シンプルな音を心を込めて弾くよう なそのサウンドはまさに今日、木造の小さな椅子とテーブルに座ってウィスキーをチビチビしながら聞きたかったような曲。
似たようなスケールをリピートするリフスタイルで始まった次の曲では Alex Nelson(アレックス・ネルソン)という女性が一緒に歌い始めたのだが、これが上手い!!!シンニード・オコーナーやアラニス・モリセットのような白 人女性独特のヴォーカルを即興でギター・リフにのせている。囁くところ、まったりとした低音、そしてフックをかけてフニャ〜っと半音下げたり上げたりする 高音部分。そのシンプルな歌声がシンプルなギターと美しく折り合わさる音色に部屋中が静かに聞き入っている。
大音量のロックもエレクトロも大好きだが、こういったなんのエフェクトもないナチュラルな音をこれだけ見事に響かされると、やはり繊細な音を直に届けられるミュージシャンのすごさを再認識させられてしまう。
演奏の最中にバケツ缶が廻ってきて、チップを入れるシステムになっている。 財布の中に細かいお金が1ドル札3枚しかなかったので、その3ドルをバケツに入れて隣へ廻す。このクオリティーが3ドルで味わえるのね。なんなら1ドルし か入れなかったとしても誰も文句は言わない。でもZebulonの客はそのスタイルが好きでここに来るため、本当にいいと思ったライブにはチップをはずむ 客も多い。そして長いことその自然なシステムで行われているために、また素敵なアーティストが集まるのだと思う。
ここ最近、特に知らないミュージシャンを見にここへ足を運んでいなかったの で、このZebulon独特の良さを忘れかけていた。後でヴォーカルのAlexに聞くと、Ofirとはいつも一緒にやっているわけではなく「今日はたまた ま」だそうで、他のアーティストやバンドともコラボしたりしているらしい。彼女の他のコラボでの歌い方もぜひ見てみたい。
がとにかく、今夜は「落ち着いた場所 x ウィスキー x 良い音楽」という私のニーズを完璧な融合感で叶えてくれたZebulonに乾杯!なり。
Emi Nips:
翻訳&ライティング、ウェブデザイン、音楽等を総合活用したコミュニケーター。
HARD NIPS のドラマー。ブルックリン、NY在住。
http://about.me/eminips

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